遅かりし感情
1
思ってたより、ずっと強くて大きい。
変なあだ名のクラスメートの
女。
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「榊〜ゴミ捨て今日オレか?」
「ああ。頼んだ。」
そいつとは出席順が近かったから掃除は一緒だった。
特に親しいわけでもないけど他の女子より話やすい奴で。
長いポニーテールに似合わない男言葉が印象的な
まあ顔はわりと可愛いけど、それ以外本人には特徴は見当たらない。
キョンと呼ばれるそいつはただのクラスメートだった。
その日までは。
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掃除も終わったしそろそろ部活に行こうと鞄を手にとった時。
ふと目立つ来客がクラスを訪れていた。
「あの、すみませんが。」
俺の席は廊下側の1番後ろで、他のクラスの奴が来ると大体俺が用件を受け付ける。
この日も例外ではなかったが、相手が相手だったので少し驚く。
だが考えて見れば、この相手も我がクラス一の奇人涼宮ハルヒコの関係者だった。
だから特に不思議でもない。
「涼宮なら授業終わってからすぐ出たけど?」
そういうと相手は困ったように笑った。
「いえ涼宮くんの事ではなくて…キョンくんはいませんか?」
そう言われてようやく気付いた。
だいぶ前にゴミ捨てにいったキョンはまだ帰っていなかった。
「そういや、ゴミ捨て行ったまま帰ってないな。」
気付いた通りの事を相手に伝えた。
するとそいつは。
北高の王子様とも称される古泉一樹は一瞬眉をひそませたあと、
あたりのやわらかそうな笑顔を見せた。
「そうですか、ありがとうございます。」
(ふーん?)
その背中を見ながら、漠然と。
あいつは涼宮のライバルかな、と思った。
(結構モテるんだなあいつ。)
さっぱりした性格でわりかし可愛いとは思うけど、
「王子様」のハートまでゲットしてるとは知らなかった。
考えてみれば奇人で有名な涼宮も、
性格以外は、顔、頭、運動神経は申し分ない。
そんな二人に思われてるとは、と邪推ながら意外に思った。
その時はそれだけで、特にあいつの心配もしなかった。
薄情だった。我ながら。
今は、そう思っているけど。
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「ん?」
部室への渡り廊下を歩いていると、
見慣れたゴミ箱が不自然に転がっていた。
(あれ、キョンが持ってったよな。)
まだゴミ箱の中身は残っていたようで、
周りに散らばっているのがわかった。
頭が嫌な感じで冷えてくるように思った。
あまりいい予感はしない場面だ。
だからといって放ってもおけない。
せめて、と思ってゴミ箱に近づいていくと。
視界に上履きが転がっているのに気づく。
そこにはクラスメートの名前が書いてあった。
「…マジかよ。」
間違いなくそれはキョンの本名で。
さらに嫌な予感に拍車をかける。
「おい、キョン?!」
少なからず焦った声をあげているのは自覚していた。
この平和な学校生活で歓迎すべきでない事件が起こったようだ。
その被害をクラスメートが受けているなんて。
ごみ箱を抱えたまま、周りを見回した。
すると、少し先の生垣の向こうから小さく声が返ってきた。
「…さ、かき?」
「キョン?!」
急いで声の方向に走った。
そこに、キョンがいた。
腹を抱えてうずくまって。
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「どした…?なんか、あったのか。」
一瞬腹痛かとも思った。
けど腹痛でごみ箱や上履きを散らす理由にはならない。
それにいつものポニーテールも崩れている。
衣服に乱れはないようだが…擦り傷はいくつか作っていた。
「…けがしてるのか?」
「……見つかったか。」
キョンはそう言って、苦笑した。
初めて見る顔だ。
「大丈夫、かよ。」
「ああ。」
気を使って聞いてみるとこともなげに返事を返してきた。
こんな状態を目にしてなければ、
何もなかったと信じてしまうような返答だ。
…オレには言えない、か?
まあ…だよな。
「榊。」
「え?なんだ。」
急に名前を呼ばれ、キョンの顔を見た。
キョンは真剣なまなざしで俺を見て。
真剣な声で言った。
「このこと、誰にも言うな。
特にハルヒコには。」
「え?」
その言葉は意外、だった。
こいつと一番近い…たぶん一番頼れるだろう男に言うな、とは。
「なんでだよ?」
オレは素直に質問を返した。
「誰がやったとか、仕返しするとかうるせーから。
……面倒だろ、そういうの。」
なあ、委員長?
そう言ってキョンはまた困ったように笑う。
オレは驚いていた。
内容に、ではない。
勿論涼宮に心配をかけたくないという気持ちで言っているのだろう。
それはわかっていた。
だけどその時のオレは確かに驚いた。
こいつ、こんな笑い方をするのか。
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To be Continued…
長編気質のマイナー思考な妄想爆発です。
1年5組の一番のイケメン榊君視点。しかも初キョン子です。
公式本買ったのが運のつきですか…(使い方おかしいですが)
別にキョンのままでもよかったのですが、キョン子のほうが私的に違和感がなくてこうなりました。
ちなみにSOS団、他は全員男子です。私の好みで。
あーでもみくるちゃんくらいは女子でもよかったかなあ…。
携帯サイトの再録ですが、サイトにはまだちょこっと先を掲載してます。
そう長くするつもりはありません…たぶん。
読んでくださった方、ありがとうございます!
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