強く儚い者たち
17
「行け!2軍など蹴散らせ!!
敵の1軍を引きずり出してやれ!!」
「おうっ!!!」
そして試合は始まった。
天国は 6番サード。
試合は牛尾のホームランで動き、6回裏0−2で十二支の攻撃。
屑桐はベンチでただ天国の姿だけを見つめていた。
(天国…お前が野球をする姿を見ることになるとはな。)
遠いあの日。
野球をする自分を見つめているのが楽しいと。
そういって笑ってくれたのは、天国だった。
お前もやらないかと、何度か誘ったけれど。
『いいよ。無涯に教えてもらうのってなんか…だし。』
冗談交じりで、そう答えていたのに。
(天国 オレを引きずり出せ。
お前自身の手で。)
そして、天国は打席に立つ。
「オラ〜テメーらセコセコしてんじゃねー!
男ならどーんと来い!オレのバットでブチかましたらー!!」
精一杯の勢いで天国は前に向かっていた。
屑桐は不安を抱えながらも強い意志を持ってバッターボックスに向かう天国の気持ちを察していた。
そして、その場にいる誰よりも信じていた。
天国はここで必ず打つと。
今までの打席がどうとか、経験がどうとか、技術がどうとかそんな事は問題ではなく。
ただ、屑桐はそう感じたのだ。
そして、天国は。
「うらあああああ!」
「ストライ〜〜〜ッ!!!」
「ワハハハなんだありゃ!」
「ちっともボールが見えてねーよ。」
「お〜いもうバットは飛ばすなよー!」
「……。」
汚い野次を飛ばす華武のメンバーに一瞬だけ冷ややかな視線を送る。
(天国…。)
そして、ツーストライク。
最後の打球。
(無涯…!見てろ!)
「おらああああああ!」
ギィン
「えっ?!」
「打球は?!」
「ファースト」
他の誰にも見えないほどの球足。
だが、屑桐には。
((これが…今。))
そして、二人の歯車は一瞬相対する。
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スコアは0−3となる。
天国は破れたユニフォームのために着替えに行った。
(よく、やったな。)
屑桐は密かな期待に答えてくれた天国に微かに笑みを浮かべる。
「ったくしょーがねーな2軍の野郎どもはよ。
ハンデつけたくれーで雑魚にやられてんなっつの。」
「だからこんなんつまんねーだけっしょ?
さっさと帰りてーな 桜花さんは一人で遊びに行ってっしズリーっすよ。」
(気になる事は一個あっけどよ…。)
御柳は一人気づいていた。
自軍の主将の視線の行方を。
すると。
「んだと〜このフーセン小僧が!!」
視線の先の存在が現れる。
「テメーらがとっとと出てくりゃーこんな雑魚共とやんなくてすんだんだ。
オラもういいかげんに出て来いや
そんなところで高処の見物できる状況かよ!?
お前らとっくにケツに火がついてんだぜ!」
(へぇ…。面白ぇじゃん、こいつ。)
御柳はたった一人で華武の1軍に向かうという普通ならとてつもなく度胸のいる事をやってのけたのだ。
最もそれが理解できていないからかもしれないとは、思っていたが。
だが、それは御柳の思い違いでしかなかったが。
天国はただこのまま屑桐自身と相対せずに全てを終えてしまうことが嫌だった。
自分で否定し続けていた事だったが。
それは分かっていても、このままで終わりたくない。
そんな矛盾した強い想いが、今の天国を突き動かしていた。
(信じさせて欲しい…
もう、あんたを恨みたくない…、オレだって…オレだってずっと…!)
ずっとずっと。
忘れられなかったのに。
To be Conrinued…
うわ〜練習試合捏造しまくりの17話目です。
さて、次はいよいよ1軍の登板。
屑桐VS天国早めに書ける様がんばります!
芭唐ん…ごめんよ、おざなりな書きかたで。
ではでは、久しぶりの更新でなんですが、今日はこの辺で…。
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