強く儚い者たち







「もう一球!!」
「はい!」

牛尾家に特訓に来て数時間。天国はいつもより長時間、激しく特訓に励んでいた。
既に日付は変わってしまっている。
なのに天国はいっこうに止めようとはせず、牛尾と特訓を続ける。
苦手な守備練習を、ずっとずっと。
自らの身体を苛め抜くように。
共に来ていた獅子川は途中で倒れるように眠ってしまっていた。

天国は獅子川以上に動いているはずなのだ。
それなのにただただがむしゃらに走り、球に向かい続けた。



「今日はここまでにしよう。」
「キャプテン!オレ・・・まだ、いけます!」
「これ以上は無意味だよ。我武者羅なだけでは上手くならない。」
「でも…!」

「猿野君。野球をはけ口にはしないでくれ。」
(そんな君を見ていられるほど僕は強くはないんだよ。)

牛尾は強い口調で天国を諌めた。


「……。」
天国は身体の動きを止めると、そのまま意識を失った。


「……猿野君…….。」
牛尾はグラウンドに倒れた天国の元に寄ると、そっとその身体を抱き上げた。

筋肉はついているが、思ったよりずっと細い身体。
ぐったりと眠る天国。


「君は…何を抱え込んでいるんだい?」


牛尾は天国の身体を柔らかく抱きしめた。
愛しい気持ちが溢れそうになるのを堪えながら。








「屑桐先輩。」
「何だ御柳。」

「何だじゃないっすよ。」

卍高校との練習試合が終わってから数日。
華武高校エース、屑桐は誰が見ても分かるほどに荒れていた。

「こんなフザけた球ばっか投げられて黙ってろっつーんすか?」
「……………。」

屑桐には返す言葉も無い。
実際にあれからは投球一つすら身に入らなかった。

原因は分かりきっている。
猿野天国。

あの鮮やか過ぎる存在が再び自分の中で芽吹いたこと。
そして有無を言わずに拒まれた事。
かつてのライバルの傍にいる事。

彼の存在に関わる全ての事が屑桐の頭を悩ましていた。


「屑桐先輩、マジで最近おかし気っすよ?(>0<;)」
「前の試合ングからだね。」

そのほかの後輩にも口々に言われる。

しかしどうしようもない。

結局その日は菖蒲監督の一声で、謹慎を言い渡されてしまった。
普段なら屈辱と捉えられることだ。
しかし今の屑桐には謹慎に思い悩む余裕はなかった。


そして今、屑桐は一人ベンチであの頃の記憶の中にいた。




「天国…明美……。」


それは3年前のことだった。

                                        To be continued・・・





はい、半端で短い第3話です。
次からは天国、屑桐、そして明美の過去話・・・。
区切りつけたかったんで、ここでいったん切ってみました。
そして半端に。(泣)自分の計画性の無さを恨め私って感じですね。(苦笑)

ここからは本気でパラレルです。
捏造しまくり!それでもお付き合いしてくださる奇特な方・・・いらっしゃったら泣いて喜びます!

そんなわけで、一応連載、続いてます・・・。


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