彼方へ
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「今宵は雪になるな…。」
ローマよりほど近くにある高原。
そこにある男が一人、風に吹かれ佇んでいた。
黒くしなやかな髪が風を受けてなびく。
それは男の整った目鼻立ちと美しい瞳を周囲に明確に現していた。
男は穏やかな表情で、その時間を楽しんでいた。
その時、誰もいないはずの男の背後より声がした。
「ガブリエル、ここにいたのか。」
「…もう見つかったか。」
軽くため息をつくと、男は後ろを振り向く。
そこに美しい金髪に切れ長の瞳をした、男性とも女性ともつかない美しい人物が現れる。
「悪いなミカエル。足労をかけた。」
苦笑しながらガブリエルと呼ばれた男は現れた人物の肩に軽く触れる。
「そう思うならたびたび居なくなるのはやめるがよい。
智天使たちも心配していたぞ。」
「…あれは少々心配症が過ぎる。」
「そうであれば尚更のことだ。外出は控えろ。
そなたの任務は下界に多いがそればかりではないのだぞ。」
たたみかけるように正論を紡ぐミカエルにガブリエルは口を噤む。
その様子に、ミカエルは一息つくと踵を返す。
「無駄な話をしている間はない。
ガブリエル、早急に戻るぞ。御主がお呼びだ。」
「…分かった。」
この世界で唯一とされる存在の呼び出しと聞くと、ガブリエルも身を引き締まらせた。
そして二人の身体が一瞬光を放ち。
天へと上った。
金髪の男はミカエル。
黒髪の男はガブリエル。
共に神に仕える大天使(アークエンジェル)である。
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「ガブリエル、参りました。」
接見の地に現れたガブリエルは、主の前に跪く。
主の姿はその偉大なるオーラによって作られたベールにより、ガブリエルの瞳には移らない。
元より、ガブリエルら大天使は最も主の間近にいることを許された存在ではあるが。
よほどの重大な使命の時以外は、主の姿を眼にすることは少なかった。
だがそれでもその声と何者もかなわない大いなる存在で、主の求める事が何であるかは詳細に至るまで把握する事が可能であった。
『前へ、ガブリエル。』
強く、大きく、温かな声が響く。
「御意…。」
ガブリエルは命じられるまま、歩を神の前に進める。
『トランシルバニアにて、悪魔に近づく者が存在する。』
「…!!」
ガブリエルは主の言葉に動揺する。
人間が悪魔と契約を交わす。
それはその者が主の道をはずれ、主に抗う事を意味する。
この言葉でガブリエルの役目は決定された。
「御意。
急ぎその者に警告と黙示を。」
『黙示の天使よ。加護を。』
その声を最後に、接見は終了した。
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主の言葉を受けたガブリエルは、同志であり親友であるミカエルに事の次第を説明していた。
「そうか。人界に下りるのだな。」
「ああ、丁度私の月が回る頃だ。
人間にとっても新たな年のはじまりだからな。力も発揮しやすい。」
「そうだな、私も異議はない。
だが…。」
ミカエルはその美しく全く変わらないよう作られた表情で言いよどむ。」
「だが?なんだ、ミカエル。」
「…いや、杞憂かもしれぬ。気にしないでくれ。」
ミカエルは一瞬悩んだ事を口にはしなかった。
「そうか。ではな。」
ガブリエルは柔らかに微笑むと、ミカエルに別れを告げた。
「ああ。そなたに…主の加護を。」
「AMEN.。」
そしてガブリエルはその場を去っていった。
ミカエルも自分の責務に戻っていった。
そして、長きに渡る闘いが始まることになる。
To be Continued…
やっと導入部です。まずは難の少ない天使の皆様から。
ミカエルの外見は完璧にオリジナルです。最も私的に無難な外見(笑)
ま、しいて言うならアンジェリークのジュリアス様とクラヴィス様足して2でわった感じです。
ガブリエルは当然のごとく映画のヴァン・ヘルシングです。髭はないけど(笑)
つぎから複雑きわまるヴァレリアス家の事情ですね。
ちなみにガブリエルの月は天使暦で1月。曜日は月曜日です。
さすが月の天使ですねえ。
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