彼方へ


第二部



12


ヴラディスラウスは、薄い笑みを浮かべて父と友人に言った。


「お久しぶりですね父上…息災でいられましたか?」


「…貴様…。」

のうのうと話すヴラディスラウスに、ヴァレリアス伯は怒りに拳を握り締めた。
ガブリエルは何も言わず、ヴァレリアス伯の肩に手を置くと。


ヴラディスラウスに向かい合った。


そして金の剣をヴラディスラウスに向けた。


その様子にヴラディスラウスはおや、と表情を変えた。



ガブリエルは、言った。

「ヴラディスラウス・ドラクリア・ヴァレリアス…神の名において、そなたを殺す。」


その言葉に、ヴラディスラウスは笑みを深くした。
そして音も無く立ち上がった。



その姿に、ヴァレリアス伯、ハロルドは剣を、ダスティは弓を構えた。



だが。




バシッ



「なっ?!」
「くっ!」
「うわっ!!」



カラン カラン




見えない手に叩かれたように、3人は武器を弾き落とされた。




「そのような無粋なものを向けないで欲しいね。父上…そして君たちもだ。」



変わらず優雅な振る舞いで、困った子を見るように、からかうようにヴラディスラウスは言う。



「…一体…。」
ヴァレリアス伯は困惑する。

だが、聖騎士団の二人はこれまでも数多の敵と戦ってきた。
その経験が、行動を速め。

二人はすばやく武器を構えなおした。



「ほう?」

ヴラディスラウスは少なからず感心したように、眼を見開いた。




「それなりに優秀な人間を連れてきたようだな、ガブリエ…。」



ピッ



「っ!」


突然閃光のような切っ先がヴラディスラウスを襲う。

ヴラディスラウスはその剣を紙一重でよける。



ガブリエルだった。

なんの感情も見せない表情だった。

それはヴラディスラウスにとっても初めて見る…残酷な天使の顔。



「不意打ちとは卑怯ではないか…?ガブリエル。」



「殺す、と言ったはずだ。」

冷たい声だった。


ガブリエルは突き刺すような眼差しでヴラディスラウスを捕らえたまま。
剣を構えなおす。



「ふふ…はははははは!!」


突然、ヴラディスラウスは大きな声をあげて笑った。



「冷たいことだ…あんなにも深く愛し合ったと言うのに。」



「…っ。」


明らかに周囲に…ヴァレリアス伯にも聞こえる声を、彼は意図的に出した。



ガブリエルは、一瞬身体を震わせるが。
表情を変えずにヴラディスラウスに向かい合った。



そして、ヴァレリアス伯はヴラディスラウスの言葉に混乱したが。
どこかで納得する自分にも気づいていた。


だから、か。と。



「…。」

「…おい、ハロルド…。」


残る二人にも少なからぬ動揺が走っていた。


特に…。



「まあその話は別の機会にするとしようか…ガブリエル?」

「…次の機会などない…と言った筈だ。」




「ふふっ。」



押し殺したガブリエルの声に、ヴラディスラウスはくすり、と笑うと。



瞬時に、姿を消した。




「!」



「ヴラディスラウス!」
ヴァレリアス伯は息子を追うが、既にそこには誰もいなかった。



「ガブリエル、敵は…!」


ハロルドの警戒を促す声を聞きながら。
ガブリエルはヴラディスラウスが瞬間移動の能力を持っていることに違和感を感じた。



あの能力は「普通のヴァンパイア」は持ち得ないものだったはず。

もしあの能力を「かれ」から受けていたのなら…。
あの能力以外にも…。



思考に揺られガブリエルは何歩か前に歩いた。




その時。





黒い影が空を切った。


その瞬時に現れた気配にガブリエルが振り向くと。







「伯爵!!!」






黒い影がヴァレリアス伯爵に襲い掛かってきたのが眼に入った。




                                         
To be Cotinued…



アクションって本当に難しいですね…。
正直効果音入れるのってちょっと照れたりしますし(笑)

…まだ泥沼じゃあないですよね…これ。
もっと頑張ります。いろいろ。^^:)


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