彼方へ
第二部
6
勝負は一瞬。その予想は確かに正しかった。
ただ勝者と敗者は逆だったのだ。
「嘘だろ…あのハロルドが一瞬で…。」
リーダーの勝利を疑わなかった二人の騎士は呆然とする。
そして当のハロルドは。
驚愕を現した後、短い間をおいて立ち上がり、ガブリエルに笑いかけた。
そして勝者にひざまずく。
「先程は失礼を申しました。我々は貴方の実力を過小に捉らえておりました。」
「謝罪する必要はない。互いの立場あっての事だ。」
ハロルドの潔い態度に、ガブリエルは穏やかな表情を浮かべた。
そしてハロルドに手を差し出す。
「もう一度頼みたい。
力を貸して欲しい。」
ハロルドはその手をとって微笑んだ。
「了解しました。我々3人は貴方に従いましょう。
失礼…お名前をお伺いしたい。
私はハロルド・ロイです。」
「よろしく願う。ハロルド。
私はガブリエル…。こちらは…。」
「私はヨフィエルと申します。よろしくお願いしますハロルド殿。」
「こちらこそ。ガブリエル、ヨフィエル。
では…。」
ハロルドは二人の仲間に視線を向けた。
ダスティは特に異論はなくなったようで、ガブリエルに挨拶をした。
だが。
マルクはまだ納得のいかない顔をしていた。
############
ヴァチカンでの最後の儀式をヴァレリアス伯が受けるのを終え次第出発することが決まった。
出発は3時間後。
その間、騎士団たちは聖なる武器の工房へ行き用意をすることになった。
ガブリエルはヴァレリアス伯の儀式を見守る役を担い。
それぞれの時間をすごすことになった。
その結果ヨフィエルは一人時間をもてあましていた。
ヴァチカンの美しい庭を歩みながら、ヨフィエルは一人物思いにふけった。
思うのはただ一人、自らの主のこと。
御主への愛を最も真摯にささげてきた彼。
だが、今彼はたった一人の人間への愛にゆれていた。
それは彼の存在の意味を考える上では決して許されないこと。
それゆえに彼…ガブリエルは今この上ない苦しみに胸を裂かれているだろう。
それを思うことがヨフィエルには辛かった。
だからこそ、ガブリエルがヴラディスラウス・ドラクリアを殺す手助けに着いてきた。
主人は優しすぎるほどに優しい。
誰よりも愛した人をそれ自身のためといえ、殺すことは困難だろう。
だからもし、彼が出来ないのであればヨフィエルは神の命に逆らってでも自分で手を下すつもりだった。
ヨフィエルはヴラディスラウスを許すことなどできない。
悪魔に誘われ、自分の大事な主人を誘惑した張本人。
神への愛をゆるがすなど、最も許せない罪なのだ…。
「なあ、アンタ。」
「え?」
突如聞こえてきた声に、思考の海に沈んでいたヨフィエルは少し驚く。
振り向くと、戦いの準備に行ったはずのマルクがいた。
マルクは、先ほどと変わらず複雑な表情をしていた。
「マルク殿?何か…?」
ヨフィエルは冷静さを取り戻すと、マルクに用件を聞いた。
すると、マルクはヨフィエルの目をまっすぐに見て、言った。
「聞きたいことがあるんだ。」
「私に?」
「ああ…。
アンタたちが倒さなきゃいけない「敵」って奴のこと。」
マルクは瞳をそらさない。
そんなマルクの質問に、ヨフィエルは聞き返す。
「「敵」の、何を知りたいとおっしゃるのです?
マルク殿。」
そう言うと、マルクは少し頑なな表情を崩して言った。
「そのマルク殿、ってのやめてくれるかい?
敬語もいらないよ。慣れてないしね。」
ヨフィエルは頷いた。
断る理由もなかったからだ。
「そうか。ではマルク。
君は「敵」の何を知りたいのだ?」
マルクは答えた。
「「敵」ってあの伯爵サマの息子なのか?」
ヨフィエルはこともなげに 返した。
「そうだ。神にそむく罪を犯したからな。」
瞬間マルクの表情が凍りついたのを ヨフィエルはまた 驚いた。
To be Continued…
あけましておめでとうございます!
年も明けてやっと続きがかけました、VH長編です。
ヨフィエルや聖騎士団がもう出張るでばる。
次はもっとガブリエル出します!伯爵も!!多分!(おい)
こんな奴ですが今年もどうぞよろしくお願いします!
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