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(愛しているんだ…ガブリエル…。)
『分かっている…。お前の愛を疑ったことなどない。』
(傍にいてくれ…。)
『傍にいたかったよ。許されるなら…。』
(愛してる…。)
『私も…愛してるよ…。』
ヴラディス…
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「…。」
目を開けると閉じたときと同じ天井が視界に移る。
大天使ラファエルの治療室だった。
「目覚めたかガブリエル。」
部屋の主が声をかける。
「ラファエル…。」
治癒者を確認すると、ガブリエルは身体を起こした。
軽い。
身体の回復を実感する。
「終わったのか?」
「いや。大方は回復したがまだ全快とは言えない。
あと二日はじっとしていてもらおう。」
「そう、か…。」
ガブリエルは言葉をのみこんだ。
山のようにある質問が口をつきそうではあったが。
相手はおそらく答える事はない。
もうミカエルは始末をつけてしまっているのだろうか。
ヴラディスラウスは断罪されているだろうか。
そう悩んでいると、ラファエルが再度声をかけた。
「これから禊の間へ向かう。立てるな?」
「…ああ。」
ガブリエルは重い心を振り切り、1ヶ月ぶりに身体を起こした。
########
ルシフェルの気配がトランシルバニアの地に現れたとの報告を受け。
ミカエルは真っ先にヴァレリアスの城に飛んでいた。
だが、ヴァレリアスの城にはルシフェルはいない。
ガブリエルを苛んだヴラディスラウス・ドラクリアの所業かと思ったが。
ここに存在していないことが分かった以上、この場に長居はできなかった。
勿論、ヴラディスラウスの断罪も重要ではあった。
だが人間が呼び出す悪魔であるなら、その程度は知れている。
それよりもルシフェルの存在がはるかに重要であることは言うまでも無いことだ。
全ての悪の父であり、王。
そしてかつての半身…ミカエルの双子の兄。
遥か太古の昔に、自らの剣でその野望を断ち切った。
その感触はまだ残っているに。
そして、兄に斬られた自らの傷も。
あのときは、時が味方につき、なんとか勝利を収めることが出来た。
だが…。
兄の力は、自分よりも強い。
大天使の誰よりも強大な力を持っていたのだ。
だからこそ、天にある頃に大天使の長として任についていた…。
神に背くことさえなければ。
今でもそう思っているのに…。
「兄上…っ…。」
ミカエルは1ヶ月間、ルシフェルを探し続けていた。
そしてガブリエルが目覚めたその日。
ミカエルは一度天界に戻った。
一度御主に報告をするために。
だが、その途中。
あまり好まない存在にあった。
「…ラグエル…。」
「ごきげんよう、ミカエル殿。」
天使ラグエル。
金に近い茶の巻き毛に、青い瞳が鋭く輝いている。
例によって天使であるため美しい容姿は変わらないが、どこか油断のならない瞳。
それは、仕事柄仕方のないことだったともいえる。
彼は天使達が堕ちることのないよう見張る…つまりは天使の監視の役を負っている。
ミカエルは疲れた心にむちをうって彼に聞いた。
「…何か私に用が?」
「兄上が現れたそうですね。発見されたのですか?」
「…いや。魔の気配はまだ分散している…位置を特定することができない。」
ミカエルの言葉に、ラグエルはおや、といった顔をした。
「それはおかしいですね、東欧、トランシルバニアにあると聞いたのですが…?」
その言葉にミカエルは少しいらだったような口調になる。
「トランシルバニアといってもそう狭くはない。
位置を特定するのもお前が思うほどに容易ではない。」
「そうですか、それは失礼いたしました…。」
謝罪はするが、全く反省の色は見えていない。
この様子だから、この者は好まれないのだとミカエルは、彼らしからぬことを思う。
そのことに気づいたミカエルはよほど疲れているのだなと思った。
しかし、次にラグエルがいった言葉に、一瞬気持ちが冷える。
「ですがミカエル殿。トランシルバニアには確か魔に近づく人間がいたのではありませんか?」
「…そこには真っ先に行った。」
内心ガブリエルの事を知っているのではと思いながら。
ミカエルは事実のみを言った。
「そうですか。…ですが、気をつけてください。
先ほど情報が入りました。
下級のデーモンの言葉を捕らえたとのことで…。」
「デーモンが?…聞こう。」
「『近く王が復活する。地に立つ身体を手に入れて。』、との事です。」
ミカエルは凍りついた。
地に立つ身体。
それは…。
「…人の身体に入るというのか…?
だが、ルシフェルの魂を受け入れるだけの身体など…どこに…?!」
考えても居なかったことだった。
あの強大な魂が人の脆弱な身体に入るなど…。
いや、それ以前にあの魂を受け入れるなど人の身では出来るはずがない。
「それが、数万年に一人…といわれるほどの突然変異で…。
龍に似た血を持つ人間が現れるとの事です。
全くありえないことではないと言われていましたが、ごく僅かな可能性の上に、
そのような存在が人として生まれることもあると…。」
龍…数万年前に絶えた強靭な意志と身体、深い知識を持ち、人と獣の姿を持った種族…。
人との交わりがわずかにあったため、その血流が残っているかもしれないとの伝承はあったが。
「そんな…では一体、その人間は…。」
「トランシルバニア、そこしかありますまい。」
「トランシルバニア…。」
まさか。
「ガブリエル?!何処に行く!!」
近くで、ラファエルの声が聞こえた。
「ガブリエル?!」
ミカエルはその声の方に視線を向ける。
後方の禊の間から飛び出したのだ。
「しまった!!」
聞いていたのだ。彼が器であるかもしれないという話を…。
「ミカエル殿…どういうことですか?」
ラグエルは冷静なまなざしでミカエルを見た。
彼の聞きたいことはよく分かっている。だが今はそれどころではない。
「後ほど説明する!」
ミカエルはそれだけ言うとガブリエルを追った。
「ミカエル殿!!」
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「待て!ガブリエル!!」
ミカエルは必死で追うが、ガブリエルの耳には届いていない。
ガブリエルの頭は、今聞いた話でいっぱいだった。
(ヴラディス…!)
もし本当にそうなら。
とめなければ。今度こそ。
それが…私の…。
ガブリエルは地上に、ヴァレリアス城に向かって行った。
1462年12月31日。
運命の夜が来る。
To be Continued…
遅くなりましたがまた前倒しですみませんです。
終わり方も前回と似てますしね。ああパターン化。
ここでやっとルシフェルと伯爵の関係が出ましたね。思いついてからが長かった…。
さー次こそあのときだー。
…がんばります。
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