彼方へ







「真実だ…ガブリエル…。」

辛そうな顔で、だが眼をそらすことなくヴラディスラウスは言った。


「……。」
ガブリエルは困惑を隠せない。

ヴラディスラウスは、ラドゥラスの言ったことが真実であると、そう言った。
ガブリエルに倫ならぬ想いを抱いていると言うあの男の言った事が事実であると。

何故そのような想いを?
人間の愛とは男の性と女の性の間に生まれるもの。
勿論例があればそれを外れるものも出てくるだろう。
かつての救世主はそれを神の道に背くものと捉えていた。

かの救世主の伝えた事は今目の前に居る彼にも信じるべきものとして伝えられているはず。

それとも…これが悪魔に魅入られたものの影響なのであろうか?


驚愕に彩られたガブリエルの表情に、ヴラディスラウスは苦笑した。

「私を…軽蔑するか?」

その言葉に、ガブリエルはかすかに違和感を覚えた。

軽蔑…?

違う。

そんなことは考えていない。

「いや…軽蔑はしない。」



困惑はしている。

何故?

当然だ。

私は神の任務のためこの場所に、彼の傍に来ているのだ。

その彼が自分を愛するなど…。

友情を持つのはいい。

好意を持ってくれるよう傍に居たのは他ならぬ自分なのだから。

だが、愛は…。

どう、だから私は困っているのだ。

ではなぜ惑う?

困る事なのだ。あってはいけないことだ。

そう結論して、何らかの対処を考えなければいけない。

何故わたしは惑うのだ?




―――――――――ムネガ カスカニ オドル――――――――――――――



「ガブリエル?」

「…いや…。」

黙ったままのガブリエルに、ヴラディスラウスは微かに息を漏らした。



「お前が困惑するのは無理はない…私自身そうなのだからな。」

だが、とヴラディスラウスは胸に手を当てた。

「だが私は…自分の気持ちを偽る事はできない。
 自分にも、お前にも嘘をついたままではいられない。」


初めて心から大切と思えた存在…。


だからこそ、隠す事もしたくなかった。


たとえ軽蔑されたとしても。



「ヴラディス…。」

なんと一途なのだろうか、とガブリエルは思う。

その想いを、例え神であろうとも否定する事は…きっとできない。

それが悪しきことであるとしても。

許されざる事だとしても。

人は神によって生きる事を許されているが、生きるのは人それ自身なのだから。


「私には、お前の想いを否定する事などできないよ…。
 そしてそれが罪だとも言うつもりはない。」

それはガブリエルの本心だった。
神の御使いとしてではなく。
ガブリエルという存在が思う言葉だった。


「ガブリエル…。」

ヴラディスラウスは引き寄せられるようにガブリエルの肩に触れた。


「受け入れて欲しいとは…今は言わない。
 だが、この気持ちを持つ事を許してほしい…。」

そう、今は。

ガブリエルは肩に触れられた指に力がこもるのを微かに感じた。
 
「あ…。」

気がついたとき、ガブリエルはヴラディスラウスに口付けられていた。


「……っ。」



触れるだけの、長い口付けが終わった時。


ガブリエルの目の前にヴラディスラウスの微笑があった。



その微笑みは、幸福そうで。
ガブリエルは少し恥ずかしく感じる程に。

「…いきなりすぎではないか?」

「何を初心なことを。初めてなわけでもないだろう?」

「…そりゃ、まあ。」


(初めてだよ。人間の男とは…。ι)




もやもやと考えるガブリエルと、ヴラディスラウスの眼が一瞬あって。

二人は同時に、



笑った。







そう、今はそれでいい。



今は…。





                          To be Continued…




とりあえずファーストコンタクトといったところでしょうか。
なんだかほのぼの終わりましたね。見かけは。(笑)

これからどんどん狂っていく…と思います。はい。とくにV氏。
ガブリエルもまだ今は清純ですよ〜?身も心も。(笑)
これから堕ちていきます。いろいろと…。

っていうか、こんなのんきに貴族生活送ってていいのかなあ。この一家。
戦国時代みたいな頃ですし、息子二人が結婚もしないでうだうだしてるってのはどうなんだ。
とりあえずその辺どうにかしないとヴァレリアス家がお家断絶ですもんね。
ここらを次回からなんとかやってみようかと思ってます。
…無理だったらすみません。はい。


では、今日はこの辺で…。

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