彼方へ
プロローグ
「ご主人様?どうかなさいましたの?」
「…ああ、アリーラか。
何…少し考え事をしていたようだ。」
「まあ、私を放ってほかの事を考えるだなんて。
何を思っておいででしたの?」
「…お前が思い悩むほどの事ではないよ。」
そう言うと、ドラキュラ伯爵…ヴラディスラウス・ドラクリアは花嫁の一人アリーラをそっと抱きしめた。
温もりはないが、仄かな香りのある身体。
それは一時の安らぎを与えた。
一時だけの。
そしてそれは。
あの温かな夢を忘れさせてはくれなかった。
”ヴラディス”
最後にそう呼ばれたのは、いつだったのか。
ずっとずっと遠いあの日。
天使が傍にいた陽のあたる場所。
はい、とうとう始めてしまいました。ヴァン・ヘルシング過去捏造長編。
とりあえず伯爵のモノローグからです。
これからガブリエルとの愛憎劇が始まります。
さてさて、どうなることやら…。
ここまで読んで下さった方、本当に有難うございます!!