こいあうもの


第2部






伊達の城を出てから数か月後。
真田幸村は大坂の地にいた。

馬に揺られ、広大な大坂城へと入ろうとしていた。
大坂城。
天下に最も近い男…覇王、豊臣秀吉の居城である。


「これは…なんと絢爛豪華な…。」

目のくらむような姿に圧倒されつつも、天下をとる男の大きさの一部を見たような気がした。
そして今から、その男に逢おうとしていた。

幸村にとって秀吉に一対一で会うのはこれが初めてとなる。


そして秀吉の小姓として仕えることとなる。


そんな自分の身を振り返りながら、ふと頭の隅に鮮やかな影が映った。


(…健勝であろうか…。)


あれから、北の噂はあえて耳に入れないでいた。
だが、これからはそれも重要となろう。
秀吉はほどなく関東の名家、北条家小田原城に近づこうとしている。
その向こうにはあの男が、いる。



もう、忘れなければいけない。


あの冬の熱を…。


##########


かたり。

北の城の主の部屋で、硬い音が響いた。
盃が酒を満たしたままで床に転がり落ちたのだ。

「なん…だと…。」


「は。真田家は豊臣家への臣従の証として次男真田源次郎幸村を大坂城へ送り…!」

ドスッ

「っ!」

忍びの言葉を遮るように、政宗は太刀で畳を力任せに刺し貫いた。


「Shit…もっとマシな報告をしてほしいもんだ。」

その眼には、忍びが一瞬身構えるほどの怒りがこもっていた。
主は、奥州筆頭伊達政宗は怒りで震えていた。


「政宗様。」
「……なんだ、小十郎。」

その様子に、傍に控えていた側近、片倉小十郎が声を出した。

「真田家は先の戦にて徳川との確執を生んでおります。
 豊臣家に臣従することは理にかなったこと。お解りの筈。」

「…うるせえ…。」


ああ、そうだ。
先の戦、あの時から本当は分かっていた。
歴史はうねりをあげて動き始めている。

そのなかで生き残りをかけ、どの大名も巧妙に動く必要がある。
それは小大名であるあの男の家であれば当然の動きだ。
そうでなければ、あの男を天下のもとにささげなければあの男自身が消えてしまう。


そんなことは分かっていた。


そしてその上で、自らも動く必要があることも。


そんなことは…。


「分かってるんだよ…。」



だけどどうしても思わずに居られないのだ。



誰にも渡したくない、と。


そして何よりも。



あいたい、と。



                                 To be Continued…



いきなり時間がすっ飛びまして半年以上ぶりの更新です;
実はお題をお借りしたサイト様が閉鎖されたようで、身の振り方をいろいろ考えてたんですが;
とりあえずこういう形でぶっとばしてみました。

これからはお題小説じゃなくなりますが、とりあえず話は続きます。
次から、「先の戦」の話に入ります。

上杉の人質だった史実は若干端折らせてもらいます。場合によっては勝手に使うかもですが…;

ではでは、今回はこの辺で…。
早く続き書くように…します。


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