こいあうもの
第2部
2
「真田幸村、御前に。」
「よく来た。」
大坂城の主の前に幸村は平伏した。
覇王・豊臣秀吉。
威風堂々とした体格に、少なからず圧倒されながらも
幸村は顔をあげる。
「豊臣家への忠義、我が身をもって伝えに参りました。
真田家一同ここに忠誠を…。」
「ふむ。」
幸村の差し出した親書に秀吉は目を通した。
一通り目をやると、口の端をあげる。
平伏の姿勢を再度保っていた幸村は、その表情を見ることはできなかったが。
空気が色を変えることもなく、安堵し始めていた。
たとえ秀吉が気まぐれで真田家を滅ぼすと言い出しても、勝ち目はない。
もちろんそれは秀吉にとっては無為なこと以外何物でもなかったが。
そのことは幸村も、幸村の父昌幸も十二分に分かっている。
「幸村。」
「はっ…。」
突然かけられた声に幸村は身体を固くする。
秀吉はそれを見て表情を緩ませる。
若いとはいえ、戦場において紅蓮の鬼といわれる戦国随一言われる武将。
その幸村に秀吉も少なからず警戒を感じていた。
だが、幸村を目の前にするとその感情は消えうせた。
あまりにも真っ直ぐな瞳。
それは秀吉にとって普段は厭うべき頑なさでもあった。
だが。
(流石信玄の秘蔵よ…。)
かつて計り知れない器を感じた武将が脳裏に浮かんだ。
「そう固くなるな。
これからお前は私の側近くに控えることになるのだからな。」
それは秀吉にとって珍しいとも言える微笑みだった。
「…はい…!」
そして、幸村はこの瞬間覚悟を決める。
あの時から固まっていた心だった。
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場内に別宅を構えることとなった幸村は、そちらへと足を運ぶ。
幸村の側仕えには真田家から遅れてくることになっていた。
幸村は城内を歩きながら、ふといつもそばにいた忍びを思い出す。
(佐助…。)
お前がいればすぐ話したいことがあったのに。
きっと信じられぬだろうが。
(オレはお館様と別の人物に仕えることになったぞ。)
心の中で言葉にする。
(自分でも信じられぬがな…。)
苦笑しながら、空を見上げた。
今でも、佐助が鳥とともに飛んで来そうで。
(ああ、でもそこにいるのかもしれぬな。)
秀吉のもとへ行くように諭した半兵衛の魂のように。
人の魂は死したのちどこへゆくのか。
お館様のこころは、佐助のこころは。
他にも多くの死んでいった仲間たちのこころは。
敵であった者たちのこころは。
この固まりつつある世をどのような想いで見つめるのか…。
そして…。
「考え事か。」
「?!」
突如背後から聞こえた声に、幸村は瞬間的に気を張り詰めさせた。
だが、その声を思い出す。
思い出した途端に別の驚愕が幸村の心を包んだ。
「…なぜ…そなたがここに…。」
驚いた顔のままで振り向いた。
そしてさらに驚いた。
「その姿は…。」
そこにいたのは、美しい衣装を身にまとう色素の薄い髪と白い肌の、
衣装以上に美しい顔立ちの女性。
「…お前の側仕えは私だ。
直江兼継殿のお心添えでな。」
「兼継殿が?
だがなぜそなたが…?」
幸村の問いに、彼女は少しうつむいて小さな声で呟くように言った。
「私が…頼んだ。」
「…。」
さらに驚愕する幸村の表情を見て、彼女はむっとしたのか。
少し声を荒げる。
「わ…悪いか?!」
「いや、そういうわけでは…。
少し驚いたでござる、が…。」
「また会えて嬉しゅうござるよ。かすが殿。」
「……!そ…か。」
笑いかけてきた幸村の笑顔に、戸惑いながら。
かすがの顔にもはにかんだ笑顔が浮かんだ。
To be Continued…
いろいろよそ見してましたら何ヶ月振りだろうBASARAです;
あれ?ダテサナって書いてるのに真かすですね…;;
ついでに先の戦にいってないし、直江さんの名前も出たし。
こんなんですみません;;
ここにいたる経緯をちゃんと書けるよう頑張ります;;
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