こいあうもの


三 暖かい腕で包んであげる、だからどうか幸せな夢を…


「う……。」
「幸村?」

まただ。また魘されている。

幸村が全てを失い、伊達の保護下に入ってからもう半年近くなっている。
だが、幸村の失われた記憶の奥底で、悪夢はいつも蠢いていた。

半年間。
何度こんな幸村を見ただろう。

何度も愛しても
何度も大丈夫だと言っても、幸村の底には触れることもできない。

無理もないかもしれない。
幸村の悪夢の中核に、間違いなく自分も存在しているのだから。


「…幸村…。」

そう思うと、やるせなくて、辛くて。
悔しくて苦しくて。

政宗は、これほどの無力感を知らなかった。


どうして 愛してるのに幸せに出来ない?


「どうすればいい?…幸村…Please…教えてくれ…。」

「……っ…。」

びくり、と身体を振るわせる。

呼びたい名前が、出てこないのか。


「……………!!」
かすれた声は言葉にはならない。

そんな姿を見るに忍びなくて。

政宗は幸村の震える肩を抱き寄せた。
力強く。


「オレがここにいる…ここにいるから…幸村…。」

「……ぅ…。」

「だから…泣くな…。」




「…む、ね…どの…。」


小さく呼ばれた名をどこかで聞きながら。

二人は夢に沈んだ。



######

「政宗様。刻限にございます。」

「…あぁ。時間か。Thank you、小十郎。」

朝。
いつものように小十郎が政宗を呼びに来た。

「今、行く。」

「はっ。」

小十郎に答えながら、政宗はまだ寝入ったままの幸村を見た。

まだ寝顔は幼げだったが…初めて会ったときと比べると、確実に大人に近付いていた。
今は、魘されていない。
その事に少なからず安堵する。


「…後でな、幸村。」


少し手を握ると、政宗は衣を羽織り、部屋を出た。



####

政宗の気配が消えた時、うっすらと幸村の瞳が開く。


「……。」
幸村はゆるりと身体を起こすと。
政宗の温もりの残る布を手に取った。



「……どの…。」



どこか遠い目をして。

幸村は布を握り締めた。



                              To be Continued…


久々にBASARA更新です!相変わらず薄暗さ絶好調。
これから少し展開がすすむようにしたいんですが…どうなることやら。

切なく痛く、ちょっと優しく?みたいな雰囲気がいい…とか勝手に考えてます(笑)


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