彼方へ  


第二部


プロローグ


静かな水音とともに泉からひとが現れた。

ゆるやかに波打つ黒髪に、くっきりと整った目鼻立ち。

全てが彫刻のように洗練された形をした美しいひと。

しとどに濡れた身体は泉が反射する光を一身に浴びて。

哀しそうに瞳を閉じたまま上を向いて。


ふと、泉の上空からやわらかな光が注がれた。

太陽とは違う、熱のない。

けれど包み込むような光。

かれはゆっくりと眼を開ける。


終了したのだ。




「終えたか。ガブリエル。」

泉から出ようと身体を向けたかれに、前方から声がかけられた。

金の髪をなびかせた、この世ならぬ美しいひとだった。


「…ああ。」



「そうか。」

それだけ答えると、金の髪の美しいひとは手に持っていた剣を差し出した。

それは、黄金色に輝く眩いばかりの聖なる剣。



「…それは…。」


驚いた黒髪の美しいひとに、金の髪の美しいひとは言った。



「御主より許しをいただいた…。

 これをそなたに仕わす。お前であれば、これも従うだろう。」


「…!」



「お前の手で始末をつけろ。


 御主の力をもって…。」


黒髪の美しいひとは、ひとりの面影が胸に現れるのを感じ。

胸が痛むのを知り。

だが、剣を受け取った。


「御意…。」



金の髪の美しいひとは黒髪の美しいひとの傍に寄ると。

その両の腕で黒髪の美しいひとを包んだ。




「強くあることを…ガブリエル…。」


「…ありがとう…。」


黒髪の美しいひとは、哀しげに笑った。



                              To be Continued…



第二部開始です。遅くなったわりにプロローグのみですみません。
今回は、しそこなった禊ですね。これキリスト教でするのかと聞かれると…。
いや、すみません。わかりません。
でも禊って好きなんですよね〜泉や池の水で身体を清めるって、なんかよくないですか?(笑)

さ、これから本格的な戦争が始まりますね。
目指せ更なる泥沼!!

読んでくださる皆様、いつもほんとうにありがとうございます!!

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