強く儚い者たち
13
「明美…。」
屑桐が衝動に駆られ天国に口付けたあと。
そこに一人の少女がいた。
その姿を確認した一瞬、天国の肩を掴む屑桐の手から力が抜けた。
「…………!」
「!…天国…っ」
天国はたまらない思いで屑桐の手から無言で走り去っていった。
そこに残ったのは屑桐と・・・明美だけになった。
屑桐は流石にいたたまれない気持ちで、明美に声をかけた。
「明美…。」
「謝んないでよね。」
明美は意外にも落ち着いた、いつものような声で答える。
「分かってた、から。」
明美はそう言って微笑んだ。
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走り去った天国はそのまま自分の部屋に駆け込んだ。
「天国?どうかしたの?」
息子の取り乱したような行動に、母は流石に怪訝に思った。
「なんでもない…っ。」
「無涯君とケンカでもしたの?」
「…ん、ごめん…母さん。しばらく一人にして?」
「分かったわ。落ち着いたら降りてらっしゃい。
夕食まだでしょ?」
「うん。…ありがと。」
天国は、母の心遣いを嬉しく思いながらも、先ほどの光景を思い浮かべ大きな罪悪感に捕らわれた。
「なん…で…あんな…無涯…っ。」
突然の、キス。
近しい幼馴染からされたことも。
男からキスされたことも。
天国の混乱と罪悪感の原因になっていたが。
何よりも天国に衝撃を与えたのは。